ちゃじるしの遊び日記

かわいい遊びのブログ

<第一回>21世紀アメリカ映画ベスト43(BBCのランキングから)

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昨秋、イギリスの公共テレビ局BBCが177人の評論家からの回答をもとに『21世紀の名画ベスト100』を発表。

グローバルなBBCらしい、世界中の映画を対象にしたランキングになっているのですが、ちゃじるしはやっぱりアメリカ映画が好き。

そこで、ランクインしているアメリカ映画全43本を抜き出し、これらを『21世紀アメリカ映画ベスト43』ということにしてしまおうと思いました。

数か月をかけ、すべて観終えましたので、個人的な感想とともにシェアさせていただきます。なにか映画が観たいとき、参考にしていただければ幸いです。

21世紀アメリカ映画ベスト43
( 第43位 ~ 第31位 )

第43位 (95) ムーンライズ・キングダム
第42位 (92) ジェシー・ジェームズの暗殺
第41位 (88) スポットライト 世紀のスクープ
第40位 (86) エデンより彼方に
第39位 (84) her / 世界でひとつの彼女
第38位 (83) A.I.
第37位 (82) シリアスマン
第36位 (79) あの頃ペニー・レインと
第35位 (78) ウルフ・オブ・ウォールストリート
第34位 (75) インヒアレント・ヴァイス
第33位 (74) スプリング・ブレイカーズ
第32位 (75) ビフォア・サンセット
第31位 (72) オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ

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☆ 順位ヨコの( )内がBBCでの正式な順位です
ピクサーのアニメは対象外にしています


 

 第43位 (95) 

ムーンライズ・キングダム

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監督:ウェス・アンダーソン / 出演:ブルース・ウィリスエドワード・ノートンビル・マーレイ / 2012年 / アメリカ / コメディドラマ

小さな島で起きた、12歳の少年と少女の駆け落ち。家庭環境に恵まれぬ者同士、いつしか惹かれあうようになったふたりは、綿密な(つもりの)計画を立て、これを決行したのだ。警官、親、ボーイスカウト団、おまけに巨大ハリケーンが立ちはだかるが、ふたりは必死の抵抗を続ける……好き同士なのになぜ結婚してはいけないのか? あまりに直線的で、面倒くさいほど純粋な主張が、島民の心に変化をもたらしていく。ウェス・アンダーソン監督が得意とする、濃いキャラいっぱいの群像劇。絵本のようなのほほんとした映像と、揺らがぬ主張とのコントラストがいい。新作(『犬ヶ島』2018年)は日本が舞台らしいので楽しみ。 

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 第42位 (92) 

ジェシー・ジェームズの暗殺

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監督:アンドリュー・ドミニク / 出演:ブラッド・ピットケイシー・アフレック / 2007年 / アメリカ / サスペンス(実話に基づく)

19世紀に実在し死後も人気を博した、アメリカでは有名な無法者、ジェシー・ジェイムズ。金持ちからは奪い、貧しい人には施したとか、世界初の銀行強盗犯だとか、ちょっと検索すればいろいろな武勇伝が見つかるのだが、この作品ではその勇姿は封印されている。それもそのはずで、原題は 『裏切り者ロバート・フォードによるジェシー・ジェイムズの暗殺』なのだ。ついては、ジェシーと彼のもとに転がり込んできたロバートとの関係にフォーカスした作品であり、フォークロアとしての彼を知らない私たちにとっては、幾分か肩透かしを食らう内容だ。

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 第41位 (88) 

スポットライト 世紀のスクープ

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監督:トーマス・マッカーシー / 出演:マーク・ラファロ / 2015年 / アメリカ / サスペンス(実話に基づく)

カトリック司教の6%は小児愛者で、性的虐待が常態化している――このショッキングな事実を、03年に報道した新聞社『ボストン・グローブ』の調査チーム『スポットライト』の奮闘を映画化。しかも、隠ぺいしていたのは、総本山のバチカンだというから驚きだ。こんな腐った組織が1000年も続き、今なお12億もの信者を抱えているのである。調査が進むにつれ、地元の教会をとりまく奇妙な噂を真に受けず、追求してこなかった過去を猛省し、記者魂むきだしで巨大権力に挑むスポットライトの面々。詰めの甘い記事では握りつぶされる。大胆かつ慎重に調査を進めていく姿がたまらない。人生で一度くらい、こんな仕事をしてみたいものだ。 

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 第40位 (86) 

エデンより彼方に

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監督:トッド・ヘインズ / 出演:ジュリアン・ムーアデニス・クエイドデニス・ヘイスバート / 2002年 / アメリカ / ヒューマンドラマ

家庭的かつ社交的であり、地元で羨望の的となっている主婦。しかし、夫がゲイに目覚めたことで心を乱される。教養ある黒人庭師に癒されていく彼女だが、差別主義者によってまたも追い詰められていく。自分たちの地位の確保に必死な、白人による全体主義が席巻する中、そこからあぶれた主婦が経験するマイノリティの世界を描く。消費拡大により物質面で黄金期を迎えた50年代を再現したセット。そこに、あえてメロドラマのマナーを盛り込んだ、すばらしく雰囲気のある作品。シリアスでありつつ、コミカルな描写で緩急をつけ、当時の多様性のありかたをみごとに伝えている。

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 第39位 (84) 

『her / 世界でひとつの彼女』

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ビースティーズファットボーイ・スリムなどのミュージック・ビデオを手掛けたスパイク・ジョーンズ監督による、人間とAIのラブ・ロマンス。ここでAIが主張する恋愛のかたちは、その概念に一石を投じているとも言えるが、ちょっと人間離れし過ぎかな。さて、AIの恋愛モノといえば、近年、80年代のカルト映画『エレクトリック・ドリーム』がDVD化されたが、こちらもマイケル・ジャクソンやaーhaなどのミュージック・ビデオで名高いスティーブ・バロンの監督作だ。個人的には、AIに対する発想と表現のしかた、また音楽の使い方で比べても、『エレクトリック〜』のほうが好き。同業で同テーマ。オマージュなのかも。

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 第38位 (83) 

A.I.

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監督:スティーヴン・スピルバーグ / 出演:ハーレイ・ジョエル・オスメント、フランシス・オコナー、ジュード・ロウ / 2001年 / アメリカ / SF

ロボットが人間をサポートする近未来。大病の息子を持つ一家のもとへ送られた少年型ロボットには、母親を永遠に愛するプログラムが組まれていた。しかし、息子が回復したことがきっかけで、森に捨てられてしまう……故・キューブリック監督が温めていた原案を、スピルバーグ監督が引き継いで製作。けなげなロボットの物語のようでいて、ロボットに対する人間のありかたへの寓意を含んだ作品だ。あえて言えば、ロボットを捨てた身勝手さよりも、捨てられたロボットに感情移入してしまう人間の性(さが)のほうが恐ろしい。それはやがて主従関係の逆転に繋がり、人間のアイデンティティーに関わる厄介な問題に発展することだろう。イノベーションによって足元をすくわれてはならない。

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 第37位 (82) 

シリアスマン

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監督:コーエン兄弟 / 出演:マイケル・スタールバーグ / 2009年 / アメリカ / ブラックコメディ

物理学を教えているユダヤ人教授にふりかかる災難を通し、信仰とユダヤ人社会の風俗を描く。「1967年のミネソタ郊外に住み、父は大学教授、13歳の長男がいるユダヤ一家」という設定は、監督のコーエン兄弟の生い立ちそのものなので、ある程度は経験に基づいた作品と言えそう。ユダヤ教に詳しければ、もっと楽しめたと思うけど、謎多きユダヤ人の日常を垣間見れたことに満足できた。度重なる不運を払拭すべく、ラビ(指導者)に救いを求めるが、黙示録的なラストが待っている。しかし、これもまたタルムード(苦難を乗り越えるために更新され続けるユダヤ人の知恵の書)の糧となるのかもしれない。当時の人気サイケバンド、ジェファーソン・エアプレインの何曲かが流れ、その歌詞の世界が物語の下地になっている。


 

 第36位 (79) 

あの頃ペニー・レインと

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監督:キャメロン・クロウ / 出演:ケイト・ハドソンフランシス・マクドーマンド / 2000年 / アメリカ / 青春ドラマ(実話に基づく)

学校新聞に書いたロックの記事がきっかけで、音楽誌「Rolling Stone」のライターに抜擢された15歳の少年。商業主義に抵抗する70年代のロック・シーンでの奮闘と、グルーピーの少女ペニー・レインへの淡い思いを描いた青春映画。母親やバンドマン、伝説的ライターなど、個性的だけどスジの通ったカッコいい大人たちに見守られ、成長していく姿がたまらない。やっぱり大人はいつだって、若者の味方でありたいものだ。甘酸っぱい恋の行方もきれいに着地していて最高。ちなみに、この物語はキャメロン・クロウ監督の実体験のシェアである。彼は16歳で同誌のライターに就任した。

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 第35位 (78) 

ウルフ・オブ・ウォールストリート

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監督:マーティン・スコセッシ / 出演:レオナルド・ディカプリオジョナ・ヒル / 2013年 / アメリカ / ヒューマンドラマ(実話に基づく)

実在する元・株式ブローカー、ジョーダン・ベルフォートの自伝をもとに製作。カネのためなら手段を問わず、そのモチベーションを保つためにあらゆる快楽を貪り、さまざまな中毒症状を抱えたまま突っ走る。程度の差はあれ、人には誰しもそんな部分があるわけだが、ジョーダンはその権化であり、桁違いのクソ野郎だ。しかし皮肉なことに、行いはクソであっても、全身全霊で生きているがゆえの恐るべき強運の持ち主であり、魅力もある。スコセッシ監督らしい見事なアウトローの描き方で、やや行き過ぎた男たちの半生を綴っている。

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 第34位 (75) 

インヒアレント・ヴァイス

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ノーベル文学賞候補の常連であり、現代アメリカ文学の第一人者、トマス・ピンチョンを原作者とする唯一の映画。ヒッピーの探偵が元恋人から引き受けた依頼を出発点とし、1970年のロサンゼルスを鮮やかに描く。とにかくこの探偵が無類のドラッグ好きであり、全編を通じてトリッピーなテイストになっている。文学的でありつつ、コーエン兄弟の傑作『ビッグ・リボウスキ』に相通じる、レイドバックしたロサンゼルスがたまらない、ゆるいハードボイルド。思わぬところで日本語のセリフがあってたまげた。

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 第33位 (74) 

スプリング・ブレイカーズ

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監督:ハーモニー・コリン / 出演:セレーナ・ゴメス、ヴァネッサ・ハジェンズ / 2012年 / アメリカ / 青春ドラマ

地元での生活にうんざりしている女子大生4人組。連日バカ騒ぎが繰り広げられるスプリング・ブレイク(春休み)のフロリダに繰り出し、自分探しと称してハメを外すが、いつしか自分を見失ってしまう。ビキニの女子大生がひたすらバカをやる映画なので、まじめな大人は辟易してしまうかもしれないが、若者特有の閉塞感と、そこからの逃避を描いた『トレインスポッティング』以来の正しい青春映画だと思う。で、そっちのアンセムアンダーワールドなら、こっちはブリトニーだ。謎のガールズパワーが炸裂するラストも味がある。

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 第32位 (75) 

ビフォア・サンセット

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95年『ビフォア・サンライズ 恋人たちの距離(ディスタンス)』の続編。時の流れをそのままに、出会いから9年が経過した男女を、前作と同一キャストで描く。登場人物がほぼふたりだけという大胆さが売りで、男女の会話と心の機微を楽しむ、カルト的な作品。ミニマルなアイディアは素敵だけど、会話の内容が好みかどうか、はっきり分かれそう。個人的には本作でギブアップしてしまったが、さらに9年後の3作目『ビフォア・ミッドナイト』までシリーズは続く。

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 第31位 (72) 

『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』

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監督:ジム・ジャームッシュ / 出演:トム・ヒドルストンティルダ・スウィントン / 2013年 / アメリカ / ファンタジー

何世紀にもわたって生きている、ある吸血鬼夫婦の現在を、ジャームッシュ監督らしく淡々と描いている。彼の作品で期待すべきは、ストーリーよりもサブカル的な雰囲気だと思うけど、今作はどうかな……例えば、夫はデトロイトのアングラ・ロック・シーンの中心人物という設定なのだが、90年代のシューゲイザーやネオ・サイケみたいな、今それ? という音楽をやっていたりと、全体的にジジくさい。不死身の身体に、ユース・カルチャーは似合わないかな。妻が旅行の際に携行する本の中に、三島由紀夫金閣寺』がチョイスされている。こっちの路線のほうがまだ許せた。

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