ちゃじるしの遊び日記

かわいい遊びのブログ

<第四回 : 完>21世紀アメリカ映画ベスト43(BBCのランキングから)

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イギリスの公共テレビ局BBCが発表した『21世紀の名画ベスト100』から、アメリカ映画だけをピックアップしております。

21世紀アメリカ映画ベスト43
( 第10位 ~ 第1位 )

第10位 (19) マッドマックス 怒りのデス・ロード
第9位 (13) トゥモロー・ワールド
第8位 (12) ゾディアック
第7位 (11) インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌
第6位 (10) ノーカントリー
第5位 (7) ツリー・オブ・ライフ
第4位 (6) エターナル・サンシャイン
第3位 (5) 6才のボクが、大人になるまで。
第2位 (3) ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
第1位 (1) マルホランド・ドライブ

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☆ 順位ヨコの( )内がBBCでの正式な順位です
ピクサーのアニメは対象外にしています


 

 第10位 (19) 

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』

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監督:ジョージ・ミラー / 出演:トム・ハーディシャーリーズ・セロン / 2015年 / オーストラリア・アメリカ / アクション

核汚染で文明が失われ、武闘集団が跋扈する近未来を舞台に、怒涛のアクションが炸裂する! 34歳で『マッドマックス』を監督し、その後『ベイブ/都会へ行く』(豚)、『ハッピー・フィート』(ペンギン)と、かわいい動物モノを撮ってきたジョージ・ミラー監督が、御歳70にして初期衝動を爆発させた空前絶後のアクション映画。CGを拒んだ姿勢がかっこよすぎる。こういう哲学を持った大人になりたい。

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 第9位 (13) 

トゥモロー・ワールド

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監督:アルフォンソ・キュアロン / 出演:クライヴ・オーウェン / 2006年 / イギリス・アメリカ / ヒューマンドラマ

繁殖能力を失った人類の姿を描く近未来SF。人類の希望のために戦う人々を描いているのだが、どうも彼ら自身の満足のために無茶をしているようにしか見えず、単なるイデオロギーを見せられているようで残念。臨場感ある長回しシーンへの評価が高く、確かに迫力はあったが、これらのほとんどはアクション・シーンだ。そこに力を注いだ分だけ主題がぼやけた印象だ。新約聖書を中途半端にトレースした箇所も個人的には微妙。

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 第8位 (12) 

『ゾディアック』

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監督:デヴィッド・フィンチャー / 出演:ジェイク・ギレンホールロバート・ダウニー・Jrマーク・ラファロ / 2007年 / アメリカ / サスペンス(実話に基づく)

60年代後半~70年代前半にかけアメリカを震撼させた「ゾディアック事件」を追う男たちの実話に基づいた映画。なので、これから観る方は、事件のことをネット検索せずにお楽しみあれ。当時、渦中のサンフランシスコに住んでいたデヴィッド・フィンチャー監督が、徹底的に事件現場を再現し、元刑事ら関係者を集めて、証言のとり直しまで決行。その気合いが作品に乗り移っている。劇場型犯罪には、その真実以上に人々の想像をふくらませる、妖しい力がある。そのことを、リアリティを追求した劇で示した傑作。日本食についてのセリフがいい場面で登場。

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 第7位 (11) 

『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』

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監督:コーエン兄弟 / 出演:オスカー・アイザック / 2013年 / アメリカ / ヒューマンドラマ

家も金もなく、ギター一本でギリギリの生活を送るフォーク・シンガーの奮闘と、ひとつの時代の終わりを軽やかに描く。舞台は1961年のニューヨーク。ボブ・ディランが登場する直前グリニッジ・ビレッジだ。のちにノーベル賞まで受賞するディランも、このような不器用な面々が築いてきたシーンから出てきたのだと思うと胸が熱くなる。『オー・ブラザー!』同様、T・ボーン・バーネットがサポートした音楽が素晴らしい。 

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 第6位 (10) 

ノーカントリー

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麻薬絡みの大金を奪った男、殺し屋、そしてベテラン保安官による息をのむクライム・ムービー。写真の、いかにも悪そうな男が不条理に人を殺しまくる。まるで死神のようなこの男は、出会う者すべてから生死の実権を奪う。しかし彼もまた、その行いによる因果とは無関係なところで、不条理の只中へと落ちていくのだ。このランキングに3本入ったコーエン兄弟。彼らにしては珍しく、原作ありきの作品であるが、スリリングな展開で持ち味をじゅうぶんに発揮している。

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 第5位 (7) 

ツリー・オブ・ライフ

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監督:テレンス・マリック / 出演:ブラッド・ピットショーン・ペン / 2011年 / アメリカ / ヒューマンドラマ

テキサスに暮らす一家。冒頭で次男が死に、その死が水紋のように広がり映画の輪郭を作っていく。長男の誕生まで時は遡り、彼の視点で一家の日々が描かれていく。あわせて、ビッグバンを経ての地球誕生、生命体の出現から氷河期……とダイナミックな宇宙の営みが映像で紡がれていく。神への信仰を絶やさぬ母と、己の力で上を目指せと叩き込む父。「信仰」が作品の大きなテーマだ。神を信じても救えぬ命があり、力を信じても後悔は避けられない。しかし、神であれ、己であれ、他人の意見であれ、何かに従わなければ、生きていけないのが人間だ。何ひとつ信ぜずして、なお拡大を続ける宇宙とはわけが違う。信じ、裏切られ、折り合いをつけ、また前を向く。抽象的な作品だが、映画でしかできないことを表現している。

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 第4位 (6) 

エターナル・サンシャイン

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「記憶除去手術」で、思い出の消去を試みた元カップルを描く。監督はビョークダフト・パンクなどのミュージック・ビデオを手掛けたミシェル・ゴンドリー、脚本は『マルコヴィッチの穴』『アダプテーション』のチャーリー・カウフマン。00年代を代表するふたりの鬼才が抜群の相性を発揮。現実離れした設定がロマンスを一層際立たせ、幻想的な映像が映画ならではの満足感を与えてくれる。エンドロールで流れるBECK(コーギスのカバー曲)も最高にはまってる。思いだすたび、しびれる作品だ。

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 第3位 (5) 

6才のボクが、大人になるまで。

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監督:リチャード・リンクレイター / 出演:パトリシア・アークエットイーサン・ホーク / 2014年 / アメリカ / ヒューマンドラマ

同一キャストで12年の歳月をかけ、6才の男の子(ドラゴンボール好き)が18才になるまでを2時間46分に収めた作品。描かれているのはごく普通の家庭。誰もがきっとそうだと思うけど、ある時点で人生を振り返ってみれば、過去の悩みはいつの間にか消え去っているものだし、喜びもまた思い出という箱の中にしまわれている。本作でも折々にそれなりのアクシデントが起きるが、ひとつひとつを深く追うような描写はしていない。過去に抱いた気分や状態をそのまま保有し続けることは不可能であり、ただただ目の前の一瞬を積み重ねていくことが人生なのだ。長期間撮影の本懐を果たしたかのような新しいタイプの映画に仕上がっている。監督は『ビフォア・サンセット』(32位)のリチャード・リンクレイター。納得。

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 第2位 (3) 

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

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監督:ポール・トーマス・アンダーソン / 出演:ダニエル・デイ=ルイスポール・ダノ / 2007年 / アメリカ / ヒューマンドラマ

このランキングで3本目のポール・トーマス・アンダーソン監督作。20世紀初頭のアメリカ西部。石油採掘で経済的な成功を収めた男の末路を描く。成功が男から人間性を奪った、と言うより、もともと人間性が欠けているがために、この種の成功を収めることができた、と言ったほうが正しそう。少し飛躍して考えれば、私たちはこのような男たちが作り上げた競争社会、システムの中に身を置いているわけだ。作品中の重要人物である宗教家からも、同様の危うさがたっぷり伝わってくる。映像の美しさ(アカデミー賞撮影賞受賞)も相まって、古典になり得る重厚な作品。

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 第1位 (1) 

マルホランド・ドライブ

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監督:デヴィッド・リンチ / 出演:ナオミ・ワッツ / 2001年 / アメリカ・フランス / サスペンス

深夜のロサンゼルス。ハリウッドを見下ろす山道、マルホランド・ドライブでの自動車事故からはじまるサイコ・スリラー。もともとはABCのテレビドラマになる予定だったが、パイロット版(試写用の第1話)で破談。映画化に舵を切り直し、追加撮影を行い完成させた。テレビ用に撮った作品がベースにも関わらず、第1位を獲ってしまうのが超人デヴィッド・リンチ監督である。『ツイン・ピークス』でも証明済みだが、テレビ、映画を問わず、ひたすら自分の美学を貫くリンチ。本作も、ストーリーを正確に掴むことが不可能かつ、そのことにたいした意味を与えない、お馴染みのスタイルが炸裂。古き良きアメリカと常軌を逸した世界を並走させ、映像ならではのうねりで語りかけてくる。 つい先日、二度と長編映画は撮らないと公言。残念でしかたない。

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