ちゃじるしの遊び日記

かわいい遊びのブログ

<第三回>21世紀アメリカ映画ベスト43(BBCのランキングから)

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イギリスの公共テレビ局BBCが発表した『21世紀の名画ベスト100』から、アメリカ映画だけをピックアップしております。

21世紀アメリカ映画ベスト43
( 第20位 ~ 第11位 )

第20位 (40) ブロークバック・マウンテン
第19位 (39) ニュー・ワールド
第18位 (33) ダークナイト
第17位 (31) マーガレット
第16位 (27) ソーシャル・ネットワーク
第15位 (26) 25時
第14位 (25) メメント
第13位 (24) ザ・マスター
第12位 (22) ロスト・イン・トランスレーション
第11位 (20) 脳内ニューヨーク

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☆ 順位ヨコの( )内がBBCでの正式な順位です
ピクサーのアニメは対象外にしています


 

 第20位 (40) 

ブロークバック・マウンテン

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監督:アン・リー / 出演:ヒース・レジャージェイク・ギレンホール / 2005年 / アメリカ / ラブロマンス

苛酷な季節労働で育まれた男同士の友情が、ある晩、一線を越えた関係へとステップ・アップしてしまう。故郷に戻り妻子を持ったものの、生涯にわたり惹かれあった彼ら。普遍的な恋愛映画のモチーフである、本心と通念とのあいだで葛藤する姿を描きつつ、同性愛ならではの事情についても、過不足なく描写している。悲恋ではあるが、その原因は自分を救えなかった本人にある。身も蓋もない言い方だが、そのことが、この作品の価値を高めていると思う。

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 第19位 (39) 

ニュー・ワールド

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監督:テレンス・マリック / 出演:コリン・ファレルクオリアンカ・キルヒャー / 2005年 / イギリス・アメリカ / ラブロマンス(伝説に基づく)

インディアン団体からは、植民地政策を正当化するための捏造と糾弾されているアメリカ建国の伝説、先住民女性ポカホンタスとイギリス人入植者とのラブストーリーを映画化。伝説に沿って、異文化間の恋愛を丁寧に描いているのだが、その分だけ複雑な気持ちになる。恋愛とは個人的体験であるはずなのに、この恋愛に限っては「新世界アメリカ」の宣伝に利用され、のちに多くの先住民を苦しめることになるからだ。個人の範疇から離れ、見知らぬ人々に影響を与えてしまう罪なき愛。史実から見つめると、あまりにやるせないラブストーリーなのだ。

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 第18位 (33) 

ダークナイト

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監督:クリストファー・ノーラン / 出演:クリスチャン・ベールヒース・レジャー / 2008年 / アメリカ・イギリス / SF

このランキングの中で、断トツのヒット作。犯罪撲滅のためにバットマンが奮闘するゴッサム・シティに、ジョーカーと名乗る新しいタイプの犯罪者が現れる。偽善を憎み、人間の本性を問うように犯罪を重ねていくこの男は、市民の命と引き換えに、バットマンに正体を明かすよう迫る。勧善懲悪ではなく、妥協点のないイデオロギーの対立を描いており、社会のルールに従えという主張と、そもそものルールがおかしいという主張がぶつかり合う。どちらが正義でも悪でもない。どちらの主張も、自分にとっての正義なのだ。バットマンを突き放して描くことで、あらゆる紛争の原因と仕組みを浮き彫りにしている。

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 第17位 (31) 

『マーガレット』

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軽はずみな行動によって、女性ひとりが死亡する交通事故を招いてしまった女子高生。死亡した女性の不注意として片付けられたこの出来事を通し、不安定に揺れ動く彼女の日々を描く。タイトルは、19世紀の詩人ホプキンスの『春と秋 ある幼子に』の一節「マーガレットよ、なぜ嘆く?」から。この詩は、木の葉が落ちるのを人が死んだかのように悲しむ純粋な感覚を、人はやがて失うものだ~といった内容であり、本作でもそのような展開となる。彼女の場合、自責の念を振り払うべく、自分を正当化していく過程で自分を見失い、挙句の果てには中絶する。自己正義すら実現できず、挫折しまくった彼女であるが、最後に流した涙は、成長へとつながっているはずだ。

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 第16位 (27) 

ソーシャル・ネットワーク

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監督:デヴィッド・フィンチャー / 出演:ジェシー・アイゼンバーグジャスティン・ティンバーレイクルーニー・マーラー / 2010年 / アメリカ / ヒューマンドラマ(実話に基づく)

ハーバード大生の数人が関わり開発されたFacebook。のちに彼ら内部で起きた2つの訴訟を通し、当時のいきさつを振り返る青春群像劇。Facebookをやっていない、知識ゼロのちゃじるしだが、心配無用の面白さだった。マーク・ザッカーバーグ(現CEO)がとにかくヤバい男で、他人のカネやアイディアを躊躇なく使い、キーボードを叩きまくってFacebookを開発する。自分にしか見えていないヴィジョン、確信に突き動かされていく彼。天才とは、このように没頭し、確信を具現化できる人のことだと思う。生み出したものが世間で受け入れられるか否かは、また別の話。ザッカーバーグは本物の天才だ。

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 第15位 (26) 

『25時』

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監督:スパイク・リー / 出演:エドワード・ノートンフィリップ・シーモア・ホフマン / 2002年 / アメリカ / ヒューマンドラマ

ニューヨークを舞台に人種間のさまざまなドラマを撮り続けているスパイク・リー監督が、主役に初の白人俳優(エドワード・ノートン)を起用。懲役7年が確定した男のシャバでの最後の夜を描きつつ、原作にはない演出を加え「9・11アメリカ同時多発テロ」直後のニューヨークを切りとる。大事に至り初めて覚える不安。自らを振り返り、反省と後悔をする一方で、他者にも責任を求めてしまう心理状態。男の人生にアメリカが重なっていく。

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 第14位 (25) 

メメント

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監督:クリストファー・ノーラン / 出演:ガイ・ピアース / 2000年 / アメリカ / サスペンス

妻に降りかかった事件以降、新しいことを記憶できなくなった男。メモを頼りに犯人を追う日々を、結末から発端への時系列で繋いでいくフィルム・ノワール。オチから観ているようで、実際にはオチへ向かっていく構成に初めは戸惑うが、進行するにつれ脚本の完璧さにシビれること必至。人間は記憶を根拠に、思考や感情を生み出し生きている。それは偉大なことでありつつも、見かた次第では滑稽でもあるのだ。DVD版にはリバース再生(正しい時系列)の特典があり、本編のあとはこちらもおすすめ。『ダークナイト』(18位)『インセプション』(22位)のクリストファー・ノーラン監督の出世作

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 第13位 (24) 

『ザ・マスター』

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1945年、第二次世界大戦終戦。帰還したものの、PTSDを抱え、行き場のない元海兵と、急伸中の新興宗教を率いる「マスター」と呼ばれる男との邂逅を描く。この宗教団体のモデルは、映画界でもトム・クルーズジョン・トラボルタが入信している「サイエントロジー」だと囁かれており、ところどころで酷似したエピソードが登場する。とは言え、戦後の人々のありかたのひとつを編纂した作品であり、新興宗教を批判するものではない。時代に翻弄され、または時代を利用し、生きる人々の姿を描いている。

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 第12位 (22) 

ロスト・イン・トランスレーション

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舞台は新宿。言葉のわからない異国に戸惑い、さらには、母国での生活においても自分を見失いつつある男女を描く。ストーリーを追体験できるよう、日本語の部分にはあえて各国語字幕をつけないというコンセプト。つまり、日本語がわかる私たちにとっては、その意図にそった鑑賞は不可能というわけだが、それを脇に置いても素晴らしいのがこの作品の実力。日本人ゆえの鑑賞ポイントもたくさんある。監督のソフィア・コッポラが愛した日本でしか起こり得ない傑作ロマンス。

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 第11位 (20) 

脳内ニューヨーク

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監督:チャーリー・カウフマン / 出演:フィリップ・シーモア・ホフマン / 2008年 / アメリカ / ヒューマンドラマ

人生に失望した劇作家がニューヨークを再現した巨大な舞台を作り、自分という役を他者に演じさせる……00年代に怪作を連発(※第4位を参照)した脚本家、チャーリー・カウフマン自らの初監督作。そのせいか、彼の根本にある難解な部分がむき出しになっており、正直、ツラい内容。主人公のユング的「自己実現」を目指す求道者の一面と、心身ともに絶不調な重病患者の一面が交錯し、ストーリーはこじれまくる。混乱する展開は洗脳にも似て、ごくたまに現われるわかりやすいシーンでホッとしてしまう。なんと言うか、観る側の感情を搾取する作品に思える。

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